2013年6月11日

6寸角の柱

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以前製材所で丸太から荒どりしておいた柱が、再度製材されて大工小屋にやってきました。
通し柱になる能登ヒバ6寸角の柱です。

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墨付けにとりかかる棟梁。

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足元の絡みは複雑なので大量の墨の線が描き込まれます。

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さらに柱の角面のとり具合を打ち合わせします。
実際に6寸幅の端切れを面取りしてくれる棟梁、非常にイメージし易いです。

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触ってすこし柔らかみを感じられるくらいの丸面を付けることになりました。

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度々電話がかかってくる棟梁。

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墨付けが終わった柱から大工さん達が加工していきます。

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四角いほぞ穴を掘る機械です。ドリルでどうやって四角い角を掘ることができるのか分かりますか?

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機械で荒く掘られた穴はその後長い突き鑿で平滑に仕上げます。
最後はやはり人の手です。

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二階腰の梁が四方から刺さる、四方差しという仕口のほぞ穴です。
断面欠損による強度低下を防ぐために梁の方向によって刺さる高さを変えてあります。
6寸という柱の大きさのお陰で柱の真ん中に穴が貫通しても十分な強度を保っています。
ちなみに柱の角の切り欠きは二階のフローリングが差し込まれます。
こちらも40mmという厚みのあるフローリングを直に梁に打ち付けて固定することで水平剛性を高めることになり、 これによって通常の木造では角に入ることになる火打梁を省略することができました。

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蟻ほぞを欠いた柱の元、通常は柱が土台に乗りますが今回は太い柱が直接地面に力を加えるようにと柱勝ちの構造です。

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さらに接合部に込み栓を打つという仕口のアレンジも考えてみました。
果たしてうまく機能するか・・

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こちらも大工さんの手をもう一手間煩わせる独自のディテール。
図面に描いてみたら大工さん何も言わずに作ってくれました。

さあこれでいよいよ建前の準備も完了です!



2013年5月20日

刻み2

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大工小屋では棟梁の元で何人もの大工さんが入れ替わり仕事をしています。
その技は本当に見事、様々な道具を使い分けてどんどんと木を刻んでいきます。

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長ほぞの先、よく見なければ分からないのですがほぞの横の面に鉋で削って微妙なテーパーを作っています。差し込み易くするということと、後で車知栓という斜めの楔を打った時に打てば打つほどキツく締まっていくというもの。
昔の大工さん達が考えたことがずっと伝わってきていて、ここは竿車知継ぎと言うだけでその仕口が日本全国の大工さんにはできてしまう、大工技術と言うのはそんな完成された素晴らしい技術体系なんだと松井先生は言っていました。

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大工さん達は黙々と仕事をこなしていて、いちいち説明してくれる訳ではないので、まだまだ僕には見えていない秘密がいろいろとありそうです。

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墨付け用の型

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奇麗に面とられた長ほぞ。

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鑿を叩く音が一日中響いています。

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道具のひとつひとつにも見入ってしまいます。

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金輪継ぎの仕口。
真ん中に楔をひとつ打ち込むと外れない強固な継ぎ手。登り垂木をのせる敷桁に使います。

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昔はこんな職人さん達の手仕事がもっと身近にあったのでしょう。
それでも今回呼ばれてきている方達は皆年配の方々、昔は手刻みの仕事をしてきたという人達ばかりですが、最近はほとんどその腕を振るう機会もないとのこと。40歳以下の大工さんではしたこともない人もざらだとか。
大工さん達の技術、なくてできないのならば仕方がありませんが、あるのに使わないのは本当にもったいないです。是非その技を伝授する機会を多く作って引き継いでいきたいものです。



2013年5月 7日

板図、尺寸

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設計側が書いた図面を元に大工さんが墨付けをするために描くものが板図です。
柱や梁の番付をして、手刻みする部材を決めていくための図面です。

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その他細かい木組みの納まり寸法等、打ち合わせをする時大工さんはすぐにベニヤ等の上に原寸図を描きます。
その時に使われる尺度はニッポンのサイズである尺寸。
最初は頭の中でミリメートルに換算して、それをまた尺寸に換算して話したりしていたのでどうも具合が悪かったのですが、毎日通って棟梁と話しているうちに徐々にそのまま尺寸を感覚的に掴めるようになってきました。そうして使ってみると尺寸という寸法が木組みの建築を考える上でとても使い易いサイズだということに気づきます。

例えば柱を並べるグリッドの単位は3尺、これをミリ表記では909mm(もしくは便宜的に910mm)。
3と909では圧倒的に3の方がシンプル。
柱は3寸5分角(=105mm角)、4寸角(=120mm角)、梁は尺の4寸(300mm x 120mm)垂木のピッチは1尺(303mm)・・。大工さん達が未だに尺貫法を使っていることが納得できます。

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部材の厚みも感覚的に掴め、木組みをするための仕口の欠きこみで断面がどれだけなくなるのか、強度は大丈夫かといったことにも思いが廻ります。

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屋根を乗せる垂木の長さは・・エーと三平方の定理では、と計算する間に棟梁は描いてそれを測ってしまいます。
とにかく描いてしまうことが一番分かり易い。

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登り垂木の軒の出の形状のチェックも描いてしまえば一目瞭然、cadや3Dの絵でいろいろ検証してみても原寸の情報量には及びません。そうなると縮図の図面では考えられていなかった事柄も次々とでてきて、毎日棟梁に「ここはどうなっとるんや!?」と叱られに大工小屋に通うはめに・・



ニッポンのサイズ―身体ではかる尺貫法
石川 英輔 (著)




2013年4月15日

刻(きざ)み

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大工小屋では大工さんによる刻みの作業が始まっています。
棟梁が墨を付けた各部材を、大工さん達が道具を使って文字通り刻んでいきます。
料理で言えば材料の下ごしらえにあたりますね。

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この辺りの大工さん達は「昔のように長ほぞを作って・・」とよく言います。
こちら(上)がその長ほぞ、柱や梁にしっかりと差し込んだ上、外から木の栓を横から刺してさらに固定します。

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それぞれの場所が書かれた仕口。

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こちらは蟻掛けと呼ばれる基本的な仕口のひとつ、逆三角形の形の部分を蟻と呼んでいます。

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蟻ほぞを差し込む蟻穴、女木側の仕口です。
真ん中の穴には柱が刺さります。

家の接合部すべてをこのように手刻みで作っていくので現場に行くと棟梁は「たいへんひまくうげんよ〜(とっても時間がかかるんだぞ〜)」といつも言ってきます。
それでも最近ではほとんどしなくなった仕事のようで他の大工さんが見に来たり、なかなか楽しそうにやって頂いています。


2013年4月 8日

矩計り、尺棒製作

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家の部材となる、柱、梁、桁等はあらかじめ大工小屋で加工して接合部に仕口というものを作っておかなくてはなりません。
その加工をするためには棟梁が部材ごとに墨付けというものを行います。
墨付けとは言葉通り、部材に直接、原寸大で加工する箇所を墨で描き込んでいくのです。
そしてその墨付け通りに大工さんがノミなどの道具を使い加工していきます。

棟梁がその墨付けを正しく行なうために必要なのが「矩計り(かなばかり)」と「尺棒(しゃくぼう)」というもの。
矩計りは各階の床の高さや梁桁の位置、言わば家の断面の高さ寸法を記したもので、その建物固有のものになるので、一軒ごとに作らなくてはならないものです。
一方尺棒は建物の横方向の部材の長さの基準を決めるもの。
柱の位置はだいたい3尺おきと日本建築の基本は決まっているので使い回すことも可能になります。
今回は棟梁と一緒にこれから建てる家の矩計りと尺棒を作ってきました。

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こちらは尺棒、一尺ごとに線が引かれ基準点からの距離が記されています。

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床梁などのサブ的な構造材が置かれる基準となる三尺ごとに星印が三つ、柱が置かれる基準となる6尺のところには星5つが描かれていました。尺の字の書き方も独特です。

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こちらが墨付けを行なう道具。
墨壺(すみつぼ)と墨指(すみさし)です。
墨壺は独特の形をしていますが、糸車がついており糸の先端についた針を木材に刺し、糸をピンとはってその糸を弾くと材に墨あとが付きまっすぐな線がひけるという優れもの。法隆寺建立の時代から変わらず使われ続けているという、完成された道具といえます。
墨指は竹でできた棟梁のお手製、先端が墨を含み易くするために細かく切れ目が入っています。
墨壺の中にちょんちょんと墨指をつけて墨を吸わせて使います。

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そしてこちらは指矩(さしがね)、大工さん必携の道具のひとつ、これさえあれば屋根の勾配から部材の割り付け寸法の計算、墨付けまで何でもできるという、形状はシンプル極まりないですが、非常に奥が深い道具です。
表目と裏目というのがあり、裏の目盛りは表の寸法の√2倍の寸法で刻んであり、長さを計算しなくても計れるというものだそうです。(どのような使い方ができるのかはいずれ探っていきたいところです)
棟梁が言うにはこの指矩を使える大工さんも少なくなってきてしまったとか・・

ところでお気づきかとは思いますが、写真の差矩の一本は見慣れたセンチメートルの刻みですね。
大工さんの世界ではまだまだ尺寸が主流ですが、一般の人々の暮らしの中ではメートル法が主流、私達設計する側はというと、柱や梁等の構造材の割り付けは製材する人達や加工する大工さんの世界で一般的な尺寸での寸法を使い、使う人の寸法が基準になるところ(リビングやキッチン等、内装の寸法)ではメートル法での記載というダブルスタンダード・・。
お陰で大工さんも尺寸とメートル法2種類の指矩を使い分けての墨付けをされていました。

矩計りの写真を取り忘れたので、後日追加します・・



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