2010年9月29日

大畠 裕展

前回に引き続き展覧会情報。
毎年この時期に新宿の椿近代画廊で行われている、大畠 裕さんの個展です。

http://www.tsubaki-kindaig.co.jp/exhibit.html

大畠 裕展
建築家 白井晟一設計の建物のフロッタージュ
2010年9月27日(月)〜10月9日(土)
椿近代画廊
11:00-18:30 (日曜休廊)

大畠さんともヴェネツィアでの出会い。
壁や地面のフロッタージュをライフワークにしている大畠さんがヴェネツィアでの制作で滞在した際、制作風景の撮影を依頼され、制作に日夜同行したことがありました。
ヴェネツィアの観光エリアから外れた地区で4m四方のキャンバスを道ばたや人の家の壁に構わず広げてひたすら擦るという大畠さんの行動に住民が怪しんだり、時には警官が停めに来たことも・・
大畠さんはイタリア語がしゃべれないので必然的に僕がすべてのトラブルの間に入ることになり四苦八苦したのですが、それにも増して大畠さんの作品には圧倒されました。
自身で継いでつくった巨大なキャンバスに自作の特殊な接着剤を付け、狙った壁や地面にキャンバスを配置し、4つ角に釘を打って固定すると数種類のローラーでくまなく擦り付けます。
すべての面を擦り終えるとキャンバスを剥がし、そこで剥がれ落ちた壁の土を採取して持ち帰るとその後はアトリエでの作業。キャンバスに写し取った壁のテクスチュアや色の上にさらに採取した土等を定着させて完成させるのです。
壁が作られたときから刻まれてきた、時を写し取ったかのようなキャンバスの表情は、作家の自己表現というよりは壁の記憶を残す媒体として存在する意味があるものになっている気がします。



ミラノのデザイナー細江勲夫さんの事務所を訪ねられたのも、文化人類学者の山口昌男さんを知ったのも大畠さんのお陰でした。
山口昌男さんが札幌大学の学長だった時に親交があったそうで、大畠さんの作品のことを書いた文章がありました。
http://www.sapporo-u.ac.jp/gallery/yutaka/contents.html


「敗者」の精神史
山口 昌男



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