2013年4月 8日

矩計り、尺棒製作

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家の部材となる、柱、梁、桁等はあらかじめ大工小屋で加工して接合部に仕口というものを作っておかなくてはなりません。
その加工をするためには棟梁が部材ごとに墨付けというものを行います。
墨付けとは言葉通り、部材に直接、原寸大で加工する箇所を墨で描き込んでいくのです。
そしてその墨付け通りに大工さんがノミなどの道具を使い加工していきます。

棟梁がその墨付けを正しく行なうために必要なのが「矩計り(かなばかり)」と「尺棒(しゃくぼう)」というもの。
矩計りは各階の床の高さや梁桁の位置、言わば家の断面の高さ寸法を記したもので、その建物固有のものになるので、一軒ごとに作らなくてはならないものです。
一方尺棒は建物の横方向の部材の長さの基準を決めるもの。
柱の位置はだいたい3尺おきと日本建築の基本は決まっているので使い回すことも可能になります。
今回は棟梁と一緒にこれから建てる家の矩計りと尺棒を作ってきました。

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こちらは尺棒、一尺ごとに線が引かれ基準点からの距離が記されています。

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床梁などのサブ的な構造材が置かれる基準となる三尺ごとに星印が三つ、柱が置かれる基準となる6尺のところには星5つが描かれていました。尺の字の書き方も独特です。

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こちらが墨付けを行なう道具。
墨壺(すみつぼ)と墨指(すみさし)です。
墨壺は独特の形をしていますが、糸車がついており糸の先端についた針を木材に刺し、糸をピンとはってその糸を弾くと材に墨あとが付きまっすぐな線がひけるという優れもの。法隆寺建立の時代から変わらず使われ続けているという、完成された道具といえます。
墨指は竹でできた棟梁のお手製、先端が墨を含み易くするために細かく切れ目が入っています。
墨壺の中にちょんちょんと墨指をつけて墨を吸わせて使います。

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そしてこちらは指矩(さしがね)、大工さん必携の道具のひとつ、これさえあれば屋根の勾配から部材の割り付け寸法の計算、墨付けまで何でもできるという、形状はシンプル極まりないですが、非常に奥が深い道具です。
表目と裏目というのがあり、裏の目盛りは表の寸法の√2倍の寸法で刻んであり、長さを計算しなくても計れるというものだそうです。(どのような使い方ができるのかはいずれ探っていきたいところです)
棟梁が言うにはこの指矩を使える大工さんも少なくなってきてしまったとか・・

ところでお気づきかとは思いますが、写真の差矩の一本は見慣れたセンチメートルの刻みですね。
大工さんの世界ではまだまだ尺寸が主流ですが、一般の人々の暮らしの中ではメートル法が主流、私達設計する側はというと、柱や梁等の構造材の割り付けは製材する人達や加工する大工さんの世界で一般的な尺寸での寸法を使い、使う人の寸法が基準になるところ(リビングやキッチン等、内装の寸法)ではメートル法での記載というダブルスタンダード・・。
お陰で大工さんも尺寸とメートル法2種類の指矩を使い分けての墨付けをされていました。

矩計りの写真を取り忘れたので、後日追加します・・



2013年4月 5日

土台梁桁材料到着

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大工小屋に材料の一部が届きました。
これから少しづつ材料を大工さんが加工して家の部品にしていきます。

最近の家の建て方は材料のプレカットという方法が盛んに行なわれるようになってきています。
工場の機械がプログラムされた寸法通りに木をカットしていく方法です。
大工さんも現場に行って、すべてカットされた材料をビスやボルトなどの金物を使って組み立てていくだけ。
大工さんにとっても楽な仕事です。

しかし木という材料はプラスチックのように画一的に扱えるような材料では実はありません。
樹種や育ち方、乾燥状態によって、建てられた後もその季節によって木は呼吸し、歪み変形します。
また、木の一本一本が同じ樹種であっても木目が違い、構造的に強い方向が違い、美しい木目を見せる面が違います。
カタログに載った商品をネットで購入したらそれと同じものが次の日には確実に届くような、そんなことが当たり前になってしまった僕たちにはこのことはなかなか信じられないことだと思います。
木を使った大量生産の商品をいくつもデザインしたり、オーダーメイドで無垢の木の板を使って家具を作ったりもしてきましたが、この木が画一的に扱えないということはとにかく大問題で、分かった気になっていると常に落とし穴が待っているのです。

写真の材料、木の小口をみるとあちこちひび割れが見えますね。
木は乾燥すると割れが絶対に入り、外側にもでてきます。
しかし自然乾燥もしくはそれに近い方法で乾燥された木の強度は落ちないと言われています。(木の乾燥の話はまた今度)

この一本一本違う材を大工さんが吟味し、適材適所で家の部材として割り当てることで、昔からその土地にあった家がつくられてきました。そんな木の使い方を経験的に知る大工さんも少なくなってきてしまったというのが実情のようです。

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今回お願いしている中島町の町居棟梁は昔からそんな経験を積んでいる棟梁の一人、何気なく差し金で原寸図を描きながらの打ち合せでは、僕の図面の間違いを指摘し、昔から使われてきた木組みの方法の講義さながら、非常に刺激的で勉強になります。
若手の大工さんにも是非引き継いで欲しいところです。



2013年3月29日

整地

能登デザイン室建設予定地の整地が始まりました。
若干表面に凹凸があるので、まずはフラットに。
昨年一年間草刈りに通いましたが、機械の力はスゴイです。
表面を覆っていた雑草の根達も根こそぎです。


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これ、地中に埋まっていた葛の根。雑草パワーに脱帽。

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ある程度平らになった所で、敷地の奥はお庭&畑という事で山砂を入れてもらいました。
その後近所のキャンプ場・Weランドから落ち葉をダンプ一台分ゲット。
畑をする所に寝かせて、秋くらいに混ぜようかと思います。

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よしよし。
これでようやく整地完了。
左側の建築部分は後日基礎をするためまた掘ります。
その前に、第一の難関、井戸掘りです。
市の水道管からはちょっと距離があるので、井戸水を使用予定です。

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(byタグチ)
2013年3月23日

アテの木製材

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輪島の鳳至木材さんに行ってきました。
鳳至木材は地元の森に多く生育する能登ヒバの材を主に扱っている製材所です。
今までに何度も打ち合わせを行なってきましたが、今日はいよいよ実際に使用する大黒柱の製材をして頂きにやってきました。

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柱や梁等に使う材は極力自然乾燥でストックされている材の中から選んで頂きました。
大工の手刻みによる木組みで家を作るには、木の繊維を壊さずにゆっくりと自然乾燥させた材を使用することが求められます。

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含水率計で木に含まれる水分量をみてみると、25%。しかし実際には天日乾燥で30%を切れることはいくら置いておいてもほとんどないそうです。この値は木の表面だけで内部はもう少し高いだろうとのこと。使われる木の寸法が決まると、その寸法よりも少しオーバーサイズに製材をし、少し時間を置くことで徐々に乾燥を進めていきます。

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そしていよいよの大黒柱。今回製材して頂く木は能登ヒバです。
能登ヒバは地元では档(アテ)と呼ばれ湿気にも強く、腐りにくいので土台等に使われることが多い木ですが、実際には曲げ強度、ヤング係数を見ても杉や檜よりも強く粘り強さもある材なので柱、梁にももってこい、ところが実際あまり使われていないのは、「アテは暴れる」と木をよく知る大工や木工の職人達が口を揃えて言うように、非常に扱いづらい材とされているのです。木の繊維が螺旋状に回転しながら成長していくアテ独特の捩じれた木目のため、急激に乾燥すると木が収縮して曲がってしまうのです。
大工はそのような木のクセを読み、全体の架構として丈夫な構造を作っていくというのが木組みの真骨頂なのですが、最近はプレカットで画一化された材を金物で固定していく構法が主流になってしまっているので、そんな大工技術も活かされる機会が少ないというのが現状なのです。

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捩じれた木からまっすぐな四角い柱を取るために外側のかなりの部分は切り落とされます。
巨大な木が目の前で製材されていくのを見るのは、まさに自然の命を削り取っているのだと気づかされます。

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小一時間の加工の後に出来上がった柱は、想像以上に立派な柱でこれから使うのにちょっと怖じ気づいてしまいました。
木は育った年の数だけ建材としても保つと聞くので、木を育てた自然のエネルギーを無駄にしないよう、できるだけ長持ちする建物を建てられたらと思います。

(by なら)




2013年3月21日

自邸 地鎮祭

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長い間設計中でした、自邸兼能登デザイン室の新築工事が、春の訪れとともに始まろうとしています。

先日、無事に地鎮祭を行いました。

工務店から社長と現場監督が。
そして、施主として家族で参加致しました。

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向田の伊夜比咩神社から来て頂いた神主さん。
祭壇には、酒、米,塩、海の幸、山の幸、畑の幸、が並びます。

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今回は、鋤、鍬、鎌も用意して頂き、「鍬入れ」を行いました。

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能登デザイン室では、地元の素材をなるべく使い、地元の風景に溶け込むような家を、
地元の職人さんの技術を活かして作って行きたいと考えています。
なので、こういった節目節目も大切に行っていきたいですね。
昔程盛大には出来ないかもしれませんが、身の丈に合う範囲にて。

今回は設計者兼施主ですが、お施主さんが本当に家づくりを楽しめる事(時には苦しみもあるかもしれませんが)
がとても大切ではないか、そう思っています。

(byタグチ)


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