2013年5月20日

刻み2

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大工小屋では棟梁の元で何人もの大工さんが入れ替わり仕事をしています。
その技は本当に見事、様々な道具を使い分けてどんどんと木を刻んでいきます。

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長ほぞの先、よく見なければ分からないのですがほぞの横の面に鉋で削って微妙なテーパーを作っています。差し込み易くするということと、後で車知栓という斜めの楔を打った時に打てば打つほどキツく締まっていくというもの。
昔の大工さん達が考えたことがずっと伝わってきていて、ここは竿車知継ぎと言うだけでその仕口が日本全国の大工さんにはできてしまう、大工技術と言うのはそんな完成された素晴らしい技術体系なんだと松井先生は言っていました。

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大工さん達は黙々と仕事をこなしていて、いちいち説明してくれる訳ではないので、まだまだ僕には見えていない秘密がいろいろとありそうです。

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墨付け用の型

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奇麗に面とられた長ほぞ。

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鑿を叩く音が一日中響いています。

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道具のひとつひとつにも見入ってしまいます。

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金輪継ぎの仕口。
真ん中に楔をひとつ打ち込むと外れない強固な継ぎ手。登り垂木をのせる敷桁に使います。

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昔はこんな職人さん達の手仕事がもっと身近にあったのでしょう。
それでも今回呼ばれてきている方達は皆年配の方々、昔は手刻みの仕事をしてきたという人達ばかりですが、最近はほとんどその腕を振るう機会もないとのこと。40歳以下の大工さんではしたこともない人もざらだとか。
大工さん達の技術、なくてできないのならば仕方がありませんが、あるのに使わないのは本当にもったいないです。是非その技を伝授する機会を多く作って引き継いでいきたいものです。



2013年5月16日

遣形(やりかた)

大工さん達が来て、遣形(やりかた)を行いました。
遣形とは家が建つ位置、そして高さの基準を決める大事な作業です。

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まずおおよその基礎の位置からちょっと離れた所に遣形杭(やりかたぐい)を打っていきます。

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遣形杭に水平に貫を取り付けます。
水貫とも言います。昔はこの水平をだすために中央にバケツを置いてそこからホースで水を延ばし、ホースの水のレベルに合わせて水貫の高さをだしたとか。ホースがない時代はどうしていたのでしょう・・
今はレベルをだす機械を使って簡単に水平が決められます。

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そして水貫の側面に棟梁自ら、尺棒を使って柱芯の寸法を印していきます。

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柱芯に水糸を張ったところ。
ここから垂直に何ミリ降りた所に基礎の天端を合わせる、という風に基礎の正確な位置が決定されます。

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これから工事を進めて行くにあたって、すべての基準を決めるのがこの遣形。
この後の家の位置、向きの変更はできません。

水糸を張ってから家の向きを微妙に調整しました。
設計した家は建物が受ける季節の熱環境負荷を考慮して東西方向に長い形にしてあるのですが、少し北東に傾けてて祖母ヶ浦(ばがうら)の岬方向を向くようにしました。祖母ヶ浦は妻の先祖のお墓があることもありますが、夏至には太陽が岬の先の海から登ってくるのが眺められます。夏至に早起きしてそれを確かめにきたのはもう一年も前、今年の夏至にはやはり間に合いませんでした・・




2013年5月 7日

板図、尺寸

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設計側が書いた図面を元に大工さんが墨付けをするために描くものが板図です。
柱や梁の番付をして、手刻みする部材を決めていくための図面です。

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その他細かい木組みの納まり寸法等、打ち合わせをする時大工さんはすぐにベニヤ等の上に原寸図を描きます。
その時に使われる尺度はニッポンのサイズである尺寸。
最初は頭の中でミリメートルに換算して、それをまた尺寸に換算して話したりしていたのでどうも具合が悪かったのですが、毎日通って棟梁と話しているうちに徐々にそのまま尺寸を感覚的に掴めるようになってきました。そうして使ってみると尺寸という寸法が木組みの建築を考える上でとても使い易いサイズだということに気づきます。

例えば柱を並べるグリッドの単位は3尺、これをミリ表記では909mm(もしくは便宜的に910mm)。
3と909では圧倒的に3の方がシンプル。
柱は3寸5分角(=105mm角)、4寸角(=120mm角)、梁は尺の4寸(300mm x 120mm)垂木のピッチは1尺(303mm)・・。大工さん達が未だに尺貫法を使っていることが納得できます。

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部材の厚みも感覚的に掴め、木組みをするための仕口の欠きこみで断面がどれだけなくなるのか、強度は大丈夫かといったことにも思いが廻ります。

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屋根を乗せる垂木の長さは・・エーと三平方の定理では、と計算する間に棟梁は描いてそれを測ってしまいます。
とにかく描いてしまうことが一番分かり易い。

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登り垂木の軒の出の形状のチェックも描いてしまえば一目瞭然、cadや3Dの絵でいろいろ検証してみても原寸の情報量には及びません。そうなると縮図の図面では考えられていなかった事柄も次々とでてきて、毎日棟梁に「ここはどうなっとるんや!?」と叱られに大工小屋に通うはめに・・



ニッポンのサイズ―身体ではかる尺貫法
石川 英輔 (著)




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